川村美紀子/gypsy (ジプシー)



川村美紀子

1990年生まれ。
2011年コンテンポラリーダンス界に現れ、ソウル国際ダンスフェスティバル、ダンストリエンナーレトーキョー、ポーランド・マルタフェスティバル、フィンランド・ヨヨオウルダンスセンター、ベトナム・Europe meets Asia in Contenporary Dance、クロアチア・Domino Projectなど、いずれもフェスティバル史上最年少振付家として招聘され作品を発表。

横浜ダンスコレクションEX最優秀新人賞、日本ダンスフォーラム賞、HARAJUKU PER

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スローすぎる朝、もはや昼

キュウリの価格、いつまで経っても下がらない。通りの八百屋さんでぬか漬け買おうとしたら「一本180円すっけど」とおじいちゃんに言われて絶句した。思わず「えっ、キャベツちょうだい」と手に入れたキャベツのぬか漬けは、案外悪くなかった。別の町にある八百屋さんでも、店員と主婦が向かい合って「やっぱキュウリ高い」とお互いシビアな顔をしていた。さて毎月ジャズ喫茶にて星座を踊る、それが先週終わった。やぎ座の私からはじまり、ファーストキスの相手でもある苦労人のみずがめ座の男と呑み、うお座の男女が繰り広げるドロ沼の色恋沙汰に巻き込まれ、車貸してくれたおひつじ座の老人が戦時中のことを淡々と語り出し、池袋の路地裏に無一文で落ちてたおうし座の大学生を部屋に泊め、客から300万円ぼったくろうとしたふたご座の風俗嬢に振り回された後、プロポーズされて数日で出て行ったかに座の男に心底疲れたころに、真夜中に電話で励ましてくれたしし座の母親、そして内部告発とヘッドハンティングに勤しむおとめ座の弟、の嫁さんが誘ってくれたてんびん座の歌手のライブで謎な心持ちになりつつ、旦那の働く居酒屋で愛人話に花を咲かせるさそり座の女とともに高笑い、そんな人々の録音を1年間見守り続けてくれたいて座のタップダンサー、との録音・・・・ゆるやかにつながってゆく、語りきれんばかりの濃密な一年だった。協力してくれた各星座の人々、喫茶店のマスターにDJ一平ちゃん、そして一度でも来てくれたお客さまへ、心からありがとうという気持ちです。大阪からやってきた画家と神保町でお茶し、古本屋めぐりに熱中した。そして、よさげな絵葉書をみつけた!友人らへクリスマスカードでも書こう。

年の瀬グルメ

頭の南半球を剃ってスッキリ!自分で毛を刈ると、ビシッと気合が入ります。背筋もいい感じに伸びてきたので、昨今さまざまな界隈で勃発している忘年会やホームパーティーにひょっこり顔を出している。年の瀬へ向けて他人の心意気を聴けるのはうれしく、そのかたわらで花を添える料理・・たとえばホワイトソースから作ったグラタン、丁寧な煮たまご、やさしい風味の和え物、こだわりのゆで卵、爽やかな林檎のコンポート、加圧鍋によってホロリと角がとれた角煮、かわりダネのお酒、などなど。これらを〝年の瀬グルメ〟と名付けよう。知らない調理のされ方をした食べ物との出逢いも、実は密かなよろこびでもあったりする。ちなみに私は房総半島のおばあが漬けた史上最強に酸っぱい梅干・紅生姜1キロ・野生動物に喰われぬよう早々に収穫したあまり辛すぎる大根、などを各所に持ち込んでは振る舞い、彼らの悶絶した顔を眺めている。(厄落とし)房総最強!久々の出勤。目まぐるしく忙しかったが、ミラクル続きで充実した。働く人がいなければ、成り立たない世の中なのなぁと当たり前だけど感じた。いらない仕事なんて、ないのかもしれない。たとえ疲れている時でも人には温かく在るといいなと思い、ちょっとずつ実践してみている。菩薩のように懐の深い先人には到底至りはしないものの、自分のペースで着実に歩んでいけたらと思った。いつも運転中に自己啓発的な授業を展開する人が「何事も経験していかないと、道は開かないようになっている。しばらくやってみて、得るもの得られればサクッと辞めたらいい。」と熱弁をふるっていた。薬局でトイレットペーパー買って、しもやけで真っ赤になった足の指先をグニグニしながら痛がゆさにくちびるを震わせる帰り道。花の卸問屋の前にベニバナ?みたいなのが落っこちていた。このクソ寒い夜中、ひとり売られることなくアスファルトのど真ん中にくたばっている・・かわいそうなのかふてぶてしいのか暗くてよくわからなかったので、そっと拾いあげて持ち帰り、ちいさな小瓶に入れて部屋に飾った。さいわい元気に咲いている。

キス&クライ

そこはかとなく落ち込む出来事が続いた日だった。わかりあえないと知っているのに、それでもわかりあおうと歩み寄った結果の負の連鎖。私の伝えようとする努力の方向性が、根本から間違っているのかもしれない。哀しいでも虚しいでもなくただただ憂うとき、私はこうしてITOKIの回転椅子にちいさく体育座りして顔をうずめるのだった。気を取り直して、謎のダンス会議に出席。目の前の振付家がちゃんとした大人で、普通にイケメンで見惚れた。危ない・・みんな賢いなと思う。小さじ一杯分のやさしさと厳しさをわきまえている。私はひとりおいてけぼりで、話についていくのに精いっぱいだった。否定されるのも嫌だし勝手気ままに言葉を投げ捨てるしで、まるで意地の悪い子供のようであった。雨を浴びて、自転車で帰った。ふと「バカにするのも良い加減にして」と泣きさけぶ母の声が聴こえた。馬鹿にしないと構ってくれないでしょう、ママ。幼い私はそう思いながら、四半世紀たった今でも同じ瞳で他人を見つめている。何度もなんども同じ日に誕生日が来るだけで、大人になれないと思う。身体から無自覚で悪質ないたずらを吸い取ったら、もう何も残らないような気分だ。こんな言葉らを書いてしまうこと自体、人前に立つ資格が疑われる。明日はいい日になると信じて、お風呂はいって寝よう。

パラダイス流星群

惚れてやまない女とホルモン、魅惑的でした。房総のホルモンは醤油で食べるらしい・・よく覚えておこう。油ダラダラの唇で「いちゃいちゃしたい!」と言ったら「いちゃいちゃはしません。」と真顔で即レスされ、いつものようにフラれた。花束の代わりに、房総の畑で採ってきた土まみれの大根を渡す。そしてそのまま、初めての浅草・酉の市へ。くまで多すぎじゃね?!と思いながら、他人が景気良く繰り広げる三本締めに便乗しながら歩く。先に呑まれてた姐さんらと合流し、彼女たちの神アシストのおかげで無事に女とのいちゃいちゃに成功した。うれしい!池袋までの帰り道、交通規制かかりまくってて我慢できず、途中で車降りて野ションした。えげつない言葉が飛び交う夜を女はとても楽しんでいたようだが、ふたりになった瞬間とても心配そうな顔がネオンに照らされていた。色々と呂律の回らぬ口調で懇願され、心がぎゅっとなった。こうして縛りつけて6年が経っている、おめでたい話だ。わぁーホルモン屋の前にチャリンコ置いてけぼりだったし!と気づき、今日仕事帰りに取りに行こうと思っていたらクリエイティブチームの人が近くまで送ってくれた。ささやかな〝ついで〟・・粋だねぇ。

エナジーの放射線

やっとのんびりできる日々。出勤前チャリこいでたら、池袋東口の駅前にて爆音で踊る青年に遭遇。J-POPをひたすら流し続け、黒いタンクトップに半ズボンで舞うという謎のスタイル。そして地面には〝大きなアンプください〟〝彼女募集中〟という自筆のポップ。これで、彼の中での整合性は取れているのだろうか。4曲目が終わったところで話しかけると、意外にも物腰柔らかな感じがまた狂気だった。『いつも踊ってるんですか?』「はい!ずっと渋谷でやってたんですけど、色々厳しくて。池袋は今日が初めてなんですよ〜」『こんな感じで?』「僕、音がかかると勝手に身体が動いちゃって、、う、動いちゃうんです!」これが、ガチダンサーである。と私は思っている。突き動かされる衝動のままに・・たとえまとも風なお仕事となりえようが、永遠の素人メンタルでありたいものでござる!などと言えるほど、自分がプロフェッショナルでもないのがまた厄介でもある。いつでもあいまいだ。彼の語り口がどんどんアツくなってきたので、持っていたホットコーヒーを渡して去った。駐輪場にチャリンコを停め、ご機嫌で裏路地を走る。靴の音がアスファルトに鳴り、いい感じに響いた。遠くにいた工事現場の作業員に「はい、あちらから勢いよく走って来られる方が通りまーす!」と促される。